『広島に原爆を落とす日』初日

今日は、広島に人類史上最初に原子爆弾が投下された日。その日を初日にあわせ、つかこうへい作舞台『広島に原爆を落とす日』は始まりました。

どういうわけか運良く最前列が取れ、役者の飛び散る汗と飛沫を目の当たりにしながら「つか芝居」を堪能できました。

1997年、主役が稲垣吾郎と緒川たまきのコンビで見た『広島に原爆を落とす日』。その当時好きだった(まあ、今でも好きだけど)劇団新感線の演出、いのうえひでのりが演出をするというし、山崎銀之丞、こぐれ修、河野まさと、光浦靖子、鈴木祐二、吉田智則、安村和之、村木仁、朝部淳次、黒川恭祐・・・と、好きな劇団(新感線とつかこうへい劇団)の役者がわんさか出るというので見に行ったのです。(しかし、光浦が出てたのは覚えていない(爆))

演出がいのうえさんだったので、大変新感線テイストな舞台だったけど、ラストシーンがあまりに良くて、シリアスなシーンとコミカルなシーンが織り交ぜられているのが楽しくて、よくもジャニーズが主役の舞台を3回も見られたなと(よくチケット取れたな、という意味)思うほど、ハマった舞台でした。今でも、人生で見た芝居の中のベスト3に入ります。

それを今回、筧利夫と仲間リサ、山口紗弥加が約10年ぶりに再演するというので、ダンナと一緒にシアターコクーンまで行ってきました。久々の渋谷、相変わらずギャルが多いですな(笑)。

今回はこの舞台の前につか先生がお亡くなりになり、追悼公演のようになってしまいましたが、意識してか知らずか、岡村俊一の演出は、かなり「つか舞台」に忠実だったと思いました。

あの、怒鳴り散らすような台詞回し、それでいてそのひたむきさや一生懸命さが胸を打つのですね。

話の内容も、つか先生の書いた本(戯曲ではなく小説)により忠実だったと(だから今回はヒーロー1人にヒロイン2人)思います。だから、10年前に見た舞台で不可解だったことがやっと理解できたような気がしました。

10年前には出てこなかったこと(沖縄の普天間のこととか、安保条約の密約のこととか)がうまく織り交ぜられていて、分かりやすかったです。

そんな内容ではあっても、本筋は一緒。台詞もわりと一緒(よく覚えてんなあたしも)。

つかの台詞は多くて早く、カミカミになることもしばしばで筧さん(犬子恨一郎)も例外ではなかったのですが(笑)自分の故郷、広島に自らの手で原爆を落とす、愛する百合子のために。やっぱいいねぇ筧さん!ゴロちゃんの長台詞は息が持たなかったのか、ぶちぶち切れてたけど筧さんは一気に言うもんな(でもカミカミ(爆))。

私はあなたに向けて原爆投下のボタンを押すのです。恐くはありません。
私のあなたに対する想いは、あの広島四十万市民を皆殺しにしても余りあるものなのです。
閃光が走り、広島四十万の市民が一瞬にして炎に包まれ、真夏の大空に忌まわしいきのこ雲がムクムクとたちのぼり、死の灰が人々の頭上に降り注ぐことでありましょう。
広島の緑なす山河は焦土と化し、私の名前は人類にとって最も唾棄すべき男として歴史に深く刻み込まれるでありましょう。
たとえわが名が忌み嫌われ、わが祖先が奈落に落とされ、その業火に焼かれ、悶え苦しみ、のたうちまわる宿命を背負わされようとも、私は、誇りをもって広島に原爆を投下するのであります。
誇りをもって四十万広島市民を虐殺するのであります。
私は最も愛するもの、私がこの世に生を受けて見出した無垢なるものの命、何ものにも代え難いあなたと引き換えにして広島に原爆を投下するのですから。
真に愛するものを自らの手で葬り去り、日本の未来を問うのですから。

ここだけ読むと、バカかこいつは、と思うかもしれませんが。

アメリカが原爆を完成させ、日本に落とされてはまずいと、ドイツへ刺客たる百合子を送り込み、ドイツに落とさせようと画策する日本政府。しかしヒットラーは自殺してしまい、ドイツは降伏。原爆投下の矛先は日本へ。しかしアメリカ人は自らの手で原爆など落としたくはない、ならば在日2世たる日本人、恨一郎にやるよう百合子が命令する・・・ということになって上の台詞となるのです。背景はもっといろいろあるんですが、すごいでしょ??台詞が。

実は今回、芝居の1ヶ月ほど前からツイッターで、ここのスタッフが稽古状況をつぶやいたり、筧さん自身がつぶやいていたのをずっと読んでいたので、日々舞台が出来上がっていく感じがよく分かってホントに初日が楽しみでした。

実質的な舞台稽古は2週間もやってない感じですが、やっぱりプロはすごいね。2週間であんな舞台を作り上げてしまうとは(しかも首相をやってた山本さんは、稽古中別の舞台にも出ていたという・・・)。3ヶ月も稽古してて前日に衣装縫ってるアマ劇団(私がやってたやつね(笑))とは違う。

そんなわけで、
もう一回見たい~!
です。でもチケットが・・・9500円・・・・(涙)。立ち見でも良いからあと1回は行きたいなぁ。あとは風間杜夫とかとうかず子のも見たかったなぁ・・・。

最後のカーテンコールで筧さんが
「一言だけ言わせてください。つか先生、初日の幕が開けましたよ」
と天を仰いで言ったとき、なんか一番泣けました(笑)。

つか舞台は肉体的にも精神的にもエネルギーを使うので、どうか千秋楽まで体壊さず頑張ってほしいと思います。


今回のパンフレット(左)と、13年前のパンフレット。

カテゴリ:実は芝居好き