一跡二跳ファイナル公演「流れる庭 あるいは方舟」(ややネタバレあり)

私がひいきにしていた劇団「一跡二跳」の解散公演を見てきました。

演技は出来ないけど有名であればあとはどうでもいい芸能人を主役にすえて無意味にド派手にやり、話題先行でしか客を呼べないような舞台ばかりが流行る中、まず「テーマ」ありきの一跡二跳。

劇団の演出家、脚本家である古城十忍(こじょうとしのぶ)さんが新聞記者出身ということもあるのでしょうか、そりゃもうさまざまな社会問題をテーマに舞台を上演なさってきました。

介護のこと、少子化のこと、葬儀屋と病院、在日朝鮮人、ニート、家族、学校・・・本当にいろいろなテーマを毎回見るものに突き付け、私は見終わった後、いつも何かしら考えさせられていました。

正直、一跡二跳のような「テーマありき」の劇団はあまりないので(古い考えかもしれないが、私は芝居って、見るものに何かしら考えさせるものでなければ意味がないと思っているところがある)今回の解散はものすごーーーく残念なのですが、今後も演劇活動は続けて行かれるとのことでちょっと安心しました。

今回は、とある記者クラブと市役所の災害対策本部分室が交互に入れ替わりながら進んでいきます。始まりはいつもの一跡二跳のパターン。舞台に板付きの役者が音楽とともに動き出します。ダンス、と呼べるほどのものじゃないですが(笑)全員で同じ動きをしていたかと思うといつの間にか自分たちの立ち位置に付き、芝居がスタートします。

場所は川が3本流れる地域で、大雨が降り続いている。このままだと大雨で川が氾濫するかもしれない、でも氾濫しないかもしれない。氾濫しないのに避難勧告出していいかなあ、市民から苦情来たらイヤだしな、でもデータによると明らかに氾濫する、決壊するのになかなか上が認めないんだよな。

一方記者クラブ、川が氾濫でもして誰か死ねばいいのに、そうしたら少しは国の対応もよくなるんじゃないの?以前にも大雨で道路が冠水し、バスに年配の観光客が取り残され、バスの屋根の上に避難して全員無事だったことがあった。一人でも死んでれば・・・いや、誰か死んだって何も変わらない。こんなことが繰り返されるのは「自分には関係ない」と思っているから。

記者クラブの人間も、役所の人間も、みな「自分には関係ない、自分は大丈夫」だと思っている。避難勧告が出ても、市民は誤報だと思い動かない。しかし、道路が冠水し、崩落していくのを目の当たりにし始めた記者たち。少しずつ自分たちもヤバイかもと思い始める。
そのうち、川が決壊。記者クラブにも、役所にも水が溢れ出し、ついには鉄砲水が・・・。

こんなお話しでした。

今回はまた水を多用してきました。私とダンナは一番前で見ていたのですが、公演チラシに「舞台に近い席をご希望の方は、もしかしたら完全防水スタイルでお越しいただいたほうが・・・」などと書かれていたので、いつ水が飛んでくるかと(笑)思っていましたが、飛んでくることはなかったです。
その代わり男性俳優陣はほぼ全員びしょ濡れ。うまいっ!この演出ホント上手いっ!!とうなりました(笑)。舞台中央にある木から水が噴き出す仕掛けなんですけど・・・どうせなら女優さんもぬれて欲しかった(爆)。

一跡二跳の水の舞台と言えば、私は「アジアンエイリアン」なんですけど、解散公演にふさわしい?演出であったなぁと思いました。

10余年、見続けてきた劇団がまたなくなるのは寂しいのですが、これからも「テーマありき」の姿勢は忘れずに続けて行って欲しいなぁと思った最後の公演でした。

カテゴリ:実は芝居好き